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マイケルの「映画生活」

2004年に劇場で見た65本の映画と、それ以上に見たビデオの感想が追いつきません(涙)。

そこで2005年はココロを入れ替えて、「見たらすぐ書く」を肝に銘じたいと思います。

ちなみに昨年度のベスト3は「ディープ・ブルー」「オールド・ボーイ」「ドッグヴィル」で、がっかりしたのは「ドリーマーズ」と「ロスト・イン・トランスレーション」でした。

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2003-07-29 第95回 Life of Brian
2003-02-24 第94回 シュウシュウの季節 (天浴)
2003-02-08 第93回 JSA
2003-02-07 第92回 猟奇的な彼女
2003-02-05 第91回 ラスト・プレゼント
2003-02-04 第90回 Die Another Day
2003-01-23 第89回 Little Voice
2003-01-21 第88回 Beyond Silence (Jenseits der Stille)
2003-01-20 第87回 ラヴ・ソング (甜蜜蜜)
2002-10-14 第86回 親愛なる日記 (Caro Diario)


2003-07-29 第95回 Life of Brian


この間、劇場で「Lost In La Mancha」(Terry Gilliam 監督作品「ドン・キホーテを殺した男」が如何に撮影中止に追い込まれるか、を描いたドキュメンタリー・フィルム。)を観たんだけど、「そういえば Terry Gilliam の作品って一本も見たことなかったなぁ〜」と思って、鑑賞後その足でレンタルビデオ屋に行って来ました。ホントは「未来世紀ブラジル」が観たかったんだけど貸し出し中だったもんで...彼はこの作品では監督はやっておらず、共同脚本と出演、アニメーションと特殊効果を担当してます。(出演も...)

この映画のことは知らなくても、テーマソングは皆知っている。

「人生の明るい部分だけ見てゆこうよ〜」と歌われる「Always Look On The Bright Side Of Life」はナイキのCMでも使われていた。

イギリスのコメディ集団・Monty Python による本作品は、紀元前のエルサレム、イエス・キリストと同時期を生きたユダヤ人・Brianが、ひょんなことから救世主と勘違いされてあっという間に磔されるまでを描いたナンセンス・コメディ。キリストをパロディにしたことから上映禁止が相次ぎ、DVD化の予定も当面無いとか。ちなみに日本でビデオ化されているバージョンは吹き替え盤のみで、今は亡き山田康雄が Brian の声を担当。他にも納谷悟朗、増山江威子、そして広川太一郎の怪演が聞かれる。「怪演」はそれはそれでいいんだけど、明らかに悪乗りし過ぎなんでオリジナル版ではどうだったのか、ちょっとだけ気にかかる。

随所に散りばめられた短いシーケンスがなかなかいける。「ユダヤ解放戦線」だの「独立戦線」だの似たような団体同士の小競り合いだとか、アラブの商人とのやり取りとか、発音の悪いローマ総督とのやり取りとか。

古いコメディ映画なんで間とかそういうのがフィットしないのは仕方ないとして、批判精神は今でも充分通用する。アメリカのコメディ映画にありがちなハート・ウォーミングな結末でもないのがイギリス風なのだろうか? 実はよく分からない...(パイソンものをみるのも初めてだし)

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2003-02-24 第94回 シュウシュウの季節 (天浴)


見ていて辛い映画だ。良い作品ではあると思うけど、人に薦めにくい…見ていて痛々しい…

70年代半ば、文化大革命末期の中国では、都会の少年少女を辺境の地に送り込み、そこで労働を学ばせる「下放政策」という制度があった。成都の仕立て屋の娘、天秀(Lu Lu)は親元を離れて、辺境の町に行く。当初はミルク工場で働いていた彼女だが、放牧を学ぶために更に奥地に一人で派遣され、老金(Lopsang)というチベット人の中年男と一緒のテントでの生活をさせられる。

老金は若い頃の喧嘩がもとで去勢されている、無骨で寡黙な変わり者ではあるが、彼の優しさに彼女も好感を抱くようになる。そして本部に戻る約束の半年後、彼女は精一杯おめかしして迎えを待つのだが、実は彼女が老金と暮らしている間に、文化革命は終わっており、彼女は忘れられた存在になっていた。

待てども待てども迎えが来ないある日、偶然行商人の若者が通りかかる。お金もコネもなく、帰郷に必要な許可証を得ることが出来ない彼女の為に、口を利いてくれるという。そんな若者に対し、恋に落ちたと錯覚をした彼女は、彼に体を委ねてしまう。しばらくすると、更に権力があり、より便宜を図ってくれると言う重要人物が次々と天秀を訪れ、彼女の体を貪り、弄ぶようになる…

老金は天秀が男たちに抱かれた後に局部を洗う。本来水は貴重なものなのだが、男から受けた穢れを洗い流す為に、彼女は老金に水を要求する。老金は自分の感情を露わにせず、そして彼女が男と寝ることを止める事もせず、遠くはなれた川まで汲みに行く。

特に辛いのが、天秀が堕胎のために本部のある村に行く件。既に「誰とでも寝る女」という烙印が押されていて、病室までも男が彼女を抱きに来る。そこで怪我をすれば帰郷許可が下りると聞いた彼女は、猟銃で自分の足を撃とうとするが、結局自分では出来ず、老金に撃ってくれと頼む。撃たれる前に成都にいたときのように、三つ編みを結い直す場面が切ない…

アメリカでこの映画の評論(の見出しだけ)を読んだことがある。文化革命の恥部を描いた、ということで本国では上映禁止なのだそうだ。それだけではなく、監督(女優のジョアン・チェン)も映画制作を無期限停止されているらしい…

どうでもいいことなのだが、作品の冒頭では出発する彼女を見つめる青年の視点で語られていたが、いつの間にかその青年のナレーションはなくなってしまった。彼女の消息は成都までは伝わっていないのだろうな…

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はじめまして、原作は読んだことないです。というか最近活字離れ著しくて...今度探して読んでみようと思います。 / マイケル ( 2003-03-02 09:43 )
はじまして。原作読んだことがあります。映画はまだみていませんがレンタルで観ておこうかな。 / STAN ( 2003-03-01 11:05 )
友達にたくさん会ったり、映画もたくさん見たりで充実した一時帰国になりそうですね。ところで、Jenseits der Stilleの終盤でLalaの妹が家出してきた時に、二人でお茶をするZoo駅前のカフェ、あそこには前に行ったことがあったので見ていてちょっと嬉しい気分になりました。 / マイケル ( 2003-02-26 19:33 )
あらすじ聞いただけで泣いちゃいそう...帰国したら日本語字幕で映画を見るのが楽しみの一つだったりします。ところで↓のJenseits der Stille、よくテレビでやってるんですよ。見る度に泣ける。子役のLalaちゃんが好きでした。 / トモコ ( 2003-02-25 20:49 )
最初はお風呂に入っているところを人に見られるだけで恥らっていたのですよね。本当に胸が締め付けられます。 / マイケル ( 2003-02-24 09:56 )
映画館の大スクリーンで観てしまいました。ラオジンが作ったお風呂で水浴びするシュウシュウの無邪気な笑顔がどんどん悲しくなっていくのが、観ていてせつなかったです。あの頃、時代に忘れられたシュウシュウがたくさんいたんでしょうね。。。 / 青@はじめまして ( 2003-02-24 07:20 )

2003-02-08 第93回 JSA

怒涛のように韓国映画が続いているなー
さて、ようやく見ました、JSA。

JSAとはJoint Security Area(共同警備区域)の略で、南北分断の象徴である板門店の会談場を中心としたエリアのこと。元々は南北双方による共同警備がされていたのだが、ポプラ事件(1976年:見晴らしを妨げていたポプラの木を切っていた米軍人が北朝鮮軍人に殺害された)を境に、軍事境界線がひかれ、南と北をそれぞれの軍が分割警備するちょうど映画の中に描かれたような体制に変わる。もちろん、そこでは双方の兵士が交流するようなことは起こり得ない。

ある晩、数発の銃声がJSA内にある「帰らざる橋」(朝鮮戦争後、韓国に捕らえられ、帰国を選んだ北朝鮮兵士が渡って行った、国境にかかる小さな橋)の北側の歩哨小屋で響き渡る。南北それぞれに死傷者が発生したその事件では、「南側の奇襲テロ」という北側と、「北側に拉致された兵士が脱出しようとしたのだ」という南側の、双方の主張が平行線を辿る。そして中立国であるスイスから派遣された、韓国系スイス人の女性将校ソフィー(イ・ヨンエ)が捜査をはじめる。

双方の主張が食い違う冒頭の展開から、これはソフィーが次々と事実を暴いていく推理ものかと思っていたら、中盤、映画は思いがけない方向に動いてゆく…

===

ふとした出来事から北の兵士・オ・ギョンピル(ソン・ガンホ)、チョン・ウジン(シン・ハギュン)と知り合ったイ・スヒョク(イ・ビョンホン)。更にスヒョクを兄と慕うナム・ソンシク(キム・テウ)を含んだ4人の間に芽生えた男の友情が、社会体制の違いによって破壊されてしまう悲劇。

そして、事実が明らかになることにより、更なる悲劇が起こる。「事実は曖昧なままに、それが板門店なのだ」という台詞が痛い。

南北の兵士が無邪気に遊ぶシーン。それがのどかで平和であればあるほど、いつかくる祭りの終わりと、そしてお互いが超えられない壁を予感させ、泣けてくる。この絶妙に緩急をつけた演出と、主役の南北兵士4名による演技のアンサンブルが見事。

今でもそこに存在し続けている板門店、そして未だ終わっていない南北分断を、時にはコミカルに、時にはドラマチックに描き、分断されていても同じ民族であること、そして同じ民族であっても仕方がないほど分断されている様を、一流のエンターテイメントに仕上げてしまうところが心憎い。

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2003-02-07 第92回 猟奇的な彼女


タイトルからするとモダン・ホラーの一種のようだけど、お隣韓国で「猟奇=ヨプキ」ってのは、本来の意味から離れて、「他とはちょっと変わってイケてる」とか「とんがった面白さ」という意味が新たに加わり、流行語となったようだ。

儒教の影響からか、いまだに男は男らしく、女は女らしく…みたいな風潮が強く、更に前近代的な男尊女卑の傾向が強い韓国にあって、チャン・ジヒョンが演じる、黙っていればかわいいくせに、生意気で、暴力的で、酒癖が悪くて、「殺されたい?」が口癖の「彼女」(映画の中ではずっとこう呼ばれている)は、観客から熱烈な支持を受けたらしい。

そんな彼女とひょんなことから知り合い、まるで無理矢理乗せられたジェット・コースターのように振り回されるのは、小さい頃から女の子のように育てられた気の弱い青年、キョヌ(チャ・テヒョン)。

サッカーの試合のように前半戦・後半戦・延長戦と題されたシーケンス(アメリカでリメイクされるとアメフト風にクォーター制になるのであろうか?)に分かれていて、二人が偶然出会い、キョヌが「彼女の心を癒してあげたい」と付き合いだすものの、彼女の「猟奇的」な部分がチラチラ見えだす前半は、彼女の誕生日に閉園後の遊園地を貸しきった時に起きた事件がクライマックス。

後半は、更に彼女の言動がエスカレートするが、彼女の中の弱い部分がチラリと見えてきたりもする。そして二人はお互いに向けた手紙を入れたタイムカプセル(古ッ!)を埋めて、2年後に再会することを誓って別れる。

そして、延長戦。そして2年後、キョヌは彼女の秘密を知るのであった。

基本的にはエピソードの積み重ね、それぞれのエピソードは高飛車な彼女と、キョヌの情けなさが滑稽で、大爆笑なのだけど、2時間を超える(その割にはあんまり長さを感じさせないのだけれど)のだったら、少し整理した方が良かったかもしれない。

ネットに連載されていたという原作の小説では、タイムカプセルを埋めるところで終わるらしいけど、それじゃやっぱり彼女の魅力の半分も伝わらないんじゃないかな。ラストはちょっと出来すぎな気もしたけど、散々笑わせて、最後にこういう展開に持ってきてホロリとさせるあたりツボを押さえている。

チャン・ジヒョンは「イル・マーレ」で演じた、清楚なお嬢さん風な演技とは別人のような凶暴な「彼女」を好演。

どうでもいいけど主題歌「I Believe」はDan Fogelbergの「Longer」ソックリでやんす…

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うちの田舎の映画館で2回目を見てきました。見逃していたUFOも見つけられてヨカッタ... / マイケル ( 2003-02-11 07:55 )

2003-02-05 第91回 ラスト・プレゼント


才能はあるのに、なかなか芽の出ないお笑い芸人のヨンギ(「イル・マーレ」「Interview」のイ・ジョンジェ)は、親の猛反対を振り切ってジョンヨン(「JSA」「春の日は過ぎゆく」のイ・ヨンエ)と結婚。今は両親から勘当されている。

ところが、最愛の子を幼くして亡くして以来、ヨンギはショックから立ち直れず、仕事を2年も休んだ。その後もさっぱり芽が出ないヨンギを巡って夫婦喧嘩が絶えず、寝室も別々に。おまけにヨンギはジョンヨンが寝静まるまで家に入ろうとしない。そんな夫婦間には会話もない、離婚しないのか不思議なくらいの二人。

ある日、彼と相方チョルスのところに大手芸能プロの実力者と名乗る2人の男がやってきて、1,000万ウォン(約100万円)を用意すれば売れっ子にしてみせるというが、ヨンギはそんな金は用意できないと断った。この2人組はジョンヨンが営む子供服の店にも現れるが、彼女は2人が詐欺師であることを見抜いてしまう。ところがしばしの揉みあいの末、彼女はいきなり倒れこむ。やむなく病院に彼女を送り届けた詐欺師2人組が、医師から聞かされた言葉は、彼女の余命が幾ばくもない、ということだった。

後日、ヨンギがお金を用意したと、2人組に会いに行く。そのお金が、彼女の店の権利書だったことを知ると、詐欺師2人組は我慢できずに言った。「あんたの奥さんは死にかけているんだ!」

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ポスター見れば判るくらいにメロメロなドラマ。とにかく泣ける。ハンカチが複数枚必要かも。家族写真のシーン、墓前への報告シーン、プロポーズのシーン、そこまでやるか、おい! ってな感じ。

そんでもって音楽がこれまた卑怯!(笑) 思えば冒頭のタイトルバック、出演者の名前から花が萌え出す映像、「ハングルってきれいだなぁ」と思うと同時に、それだけで泣けてきちゃった。

さて、かの国では死に行く人は残される人が未練を残さないように、気丈に振舞うものらしいが…やりすぎなんじゃないの?というようにも見える。しかし相手を思いやるばかりに口を閉ざしてしまうのは、アジア特有の感覚かもしれない。まぁ、ハリウッド映画だとこうは行かないだろう。自分の病を、決して夫に知らせようとしないジョンヨン。妻の病を知ってしまったが、知らない振りをするヨンギ。お互いに相手を深く愛するがゆえに、その気持ちを素直に表さず、悲しい演技を続ける二人。

ヨンギとチョルスのもとに、人気テレビ番組「お笑い王」勝ち抜きトーナメントへの出場のチャンスが巡ってくる。

同時にヨンギは、妻が昔のアルバムから何人かの名前を書き出していることに気付き、彼女の命があるうちに、彼女が会いたがっている人たちに会わせてあげようと、例の2人組に人探しを依頼する。

タイトルの「ラスト・プレゼント」が示すもの。それは劇場で見つけてください。

それにしても韓国映画、打率高いなぁ…

先頭 表紙

確かにブームではあるとは思うし、ある程度選りすぐられた作品が日本に来ている、とは思いますが、国内では年間60本程度しか製作されていないらしいです。国が映画に補助を出している、っていうのも効果があるみたいですが、それにしても当りの確率は高いと思います。 / マイケル ( 2003-02-06 17:30 )
韓国映画はまだ観ていませんが、話題の作品が多いですね。映画の充実期に入っているのかな。そうそう、ビデオ届きました。ホントにありがとう。 / 夢樂堂 ( 2003-02-06 16:07 )

2003-02-04 第90回 Die Another Day


来ました、来ました! 007シリーズ最新作!

第1作から40周年、そして通算20作目。過去19本をビデオでおさらいした僕にとっては、初めて劇場で見る作品。「夢パン」パーティーの後、徹夜でカラオケ、その翌朝10時半からの試写会、と言うハードな日程でしたが、眠気も吹っ飛ぶ快作でした!

韓国と北朝鮮の間の非武装地帯に着々と兵器を配備する、北朝鮮の Moon 大佐(「将軍さま」の息子)。その行動を事前に察知し、破壊工作へと赴くJames Bond(Pierce Brosnan)。ところが、何者かがリークした情報により、この極秘計画が失敗。高速ホバークラフトでの大佐とのチェイスの後、大佐は滝壷に落ちて行方不明になるが、Bondは捕らえられ、14ヶ月にも渡る監禁・拷問の日々を過ごす。

人質交換により、北朝鮮のテロリスト Zao(Rick Yune)と引き換えに釈放された Bond は裏切り者扱いをされ、00ナンバーを剥奪される。果たして彼は失った名誉を挽回できるのか?

香港、キューバ、ロンドン、アイスランド...と舞台を変え、世界を破壊へと導く狂気と対峙してゆくBond...

やはりというか、記念作品ということで過去の作品からの引用が随所に盛り込まれていて、マニアには嬉しくなる作りでした。

ダイヤモンドを活用した人工太陽(実は大量破壊兵器)である、Icarus 計画は「Diamonds Are Forever」と「Goldeneye」。

Jinx(Halle Berry)がビキニ姿で海から登場する場面は「Dr.No」だし、香港のホテルに仕掛けられたカメラは「From Russia with Love」。

「On Her Majesty's Secret Service」以来、32年ぶりのMoneypenny(Samantha Bond)の見せ場(笑)もあるし、Q(John Cleese)の研究所には過去の諜報活動で使ったグッズが所狭しと並んでいる(「Thunderball」に使った背負うジェットエンジンが懐かしい!)

ラストの飛行機でのアクションは「Goldfinger」と「The Living Daylights」...

何だか昔の作品に比べると、アクションシーンが詰まっていて、息もつかせぬ展開に拍車がかかって気が抜けないつくりになっている。が、一方でそういったアクションやSFXに誤魔化されているような気もする。

ストーリーはちょっとマンネリで前作「World Is Not Enough」に比べてもイマイチな気がするけど、北朝鮮から抗議が来たと言うリアル?な設定と、いくらなんでも...という秘密兵器のはちゃめちゃさの組み合わせが、このシリーズの魅力なので、これを受け入れて、軽い突っ込みの一つや二つくらい入れられる寛大なココロを持ち合わせていない人は見ちゃいけない映画だと思います。

さて、今回の Bond Girl はオスカー女優の Halle Berry。

前作、「World Is Not Enough」の Sophie Marceau を超える大物の抜擢。実は今まで Bond Girl をステップに大ブレイクした女優ってあんまりいない。Sophie や Halle と言った既に実績を築いている女優を起用するようになってから、彼女たちが単なる添え物ではなく、ストーリーの中心にしっかりした位置を占めるようになった。

一方、Halle Berry に対抗する、もう一人の Bond Girl、Miranda Frost 役の Rosamund Pike はその役名が示すとおりのクール・ビューティー。イギリスの舞台やテレビで活躍中の新進女優と言うことらしいが、これからが楽しみな逸材だ。

余談だけど、上映開始前に隣のカップルの男が、ボンド薀蓄を垂れていたのが悔しかった。だって全部知ってるエピソードなんだもの(笑)。俺にも語らせろ! っていうか語る相手が欲しい! ホント、羨ましいなぁ。

先頭 表紙

「俺たちは天使だ」懐かし〜! 沖雅也今頃何してるかなぁ? (←死んでますってば...) / マイケル ( 2003-02-04 23:45 )
007 Die another day 邦題:運が悪けりゃ死ぬだけさ.俺たちゃ天使だ / 808 ( 2003-02-04 23:30 )

2003-01-23 第89回 Little Voice


大好きな父親の死後、Little Voice = LV(Jane Horrocks)はずっと部屋に引き篭もり。誰とも口をきかず、父が残したShirley Bassey、Marilyn Monroe、Judy Garlandなどの古いレコードを聴く毎日を過ごしている。

一方、彼女の母・Mari(Brenda Blethyn)は夜な夜な男漁りの日々を送っている。ある日、彼女が家に連れ込んだのは三流タレント・エージェント、Ray Say (Michael Caine)。ところが彼はLVの思いがけない才能に気づく。彼女は日頃耳にしているレコードの往年の大スター達そっくりな歌声で再現することができるのだ。RayはLVを口説き落とし、ありとあらゆる手段を用いて資金を調達し、地元の場末の酒場に舞台を設定する。

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一番のお気に入りのシーンは冒頭、Frank Sinatraの「Come fly with me」が流れる場面。籠の中の小鳥LVと、伝書鳩だけが友達のBilly(Ewan McGregor)の未来を暗示している。ここのLVの表情がいい。

僕はてっきりLVがスターダムに乗って行く展開を想像していたが、そうではなかった。

彼女は大好きな歌ですら、父親の幻影なしには歌えなかった。確かにコンサートのシーンは圧巻で、この映画のハイライトであるが、同時に彼女が新しい世界に踏み出すために、断ち切らなければならないのが、父親であり、歌、ということらしい。何かを得る時には、何かを失うものなのかもしれないが、悲しい選択の様にも思えてしまった。でも別に断ち切る必要はないと思うのだけれどね。

それとともに、今一つこの映画に没頭しきれなかった理由がある。

日本に置き換えて考えて見よう。僕らは美空ひばりや淡谷のり子、越路吹雪の物真似ショーであそこまで熱狂はできない。確かに名曲揃いで、似てようが似ていまいが(実は判断できるほど元ネタを知らない)吹き替えなしで熱演するJane Horrocksはお見事(元々彼女自身が主役で上演されたミュージカルを映画化したものらしい)だけど、国民性の違いを感じる。

そして多分、オリジナル楽曲に関する知識があればもっと楽しめるかもしれない。歌詞やその歌が使われた映画に伏線があるはずなのだ。そういう意味でも予備知識があればもっと楽しめたと思うと残念。

余談だが…母親の友人として登場する終始無言の太ったおばさん(Annette Badland)がいい味出しすぎていて、何気にお気に入り。

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偶然ですよ、偶然... でも画像を貼りこんだ時に自分でもちょっとビックリした。 / マイケル ( 2003-01-24 08:27 )
両手をあげているシリーズ? あ,前のはクラリネット持ってるなぁ.. / 八百八六助 ( 2003-01-24 00:08 )

2003-01-21 第88回 Beyond Silence (Jenseits der Stille)


聾唖の両親に育てられた娘には音楽の才能があった。そのことが父親との関係に暗い影を落とす。障害を扱っていながら、あまりそれを感じさせず、あくまで親子の自立と家族の問題を描いた作品。

Lala(子供時代はTatjana Trieb、その後Sylvie Testud)は、聾唖である父・Martin(Howie Seago)と母・Kai(Emmanuelle Laborit)にとっては外界とのインターフェース。8歳にして手話を使いこなす彼女は、テレビドラマの台詞を通訳したり、銀行に借金を頼みに行く両親とともに学校を早退したりする。学校の成績のことで呼び出しを食らったりするときには、肝心な部分をぼやかして翻訳したりとなかなかデキル子である。

そんな彼女の憧れは叔母Clarissa(Sibylle Canonica)。美人で都会的なセンスを持つ彼女は、クラリネットの演奏も巧かった。祖父母の家で行われたクリスマス・パーティーでLalaはClarissaからクラリネットを貰う。

Lalaはメキメキと音楽の才能を発揮しだすが、音のない世界に住む父親にとって、音楽は娘を自分の世界から遠ざけるものであり、次第に自分の才能に賭けてみたい彼女との間の衝突の種になる。実はMartinとClarissaの兄妹間にはクラリネットを巡る確執があった。幼い頃、父の誕生日のパーティーにて父のピアノ伴奏と合わせ演奏するClarissaを目の当たりにしたMartinは疎外感を感じ、暴れだす。それ以来、彼らの父は、Martinに愛情を注がなくなる。

18歳になったLalaは演奏家を目指すため、父の反対を押し切り、音楽学校受験のためにBerlinのClarissaの家に身を寄せた。しかし、叔母との生活にもストレスが溜まってくるようになる。なぜなら彼女の演奏に対するアドバイスは「Lalaのため」と言いながら、実は「自分が好きか、嫌いか」でしかないからだ。そんなある日、彼女は、聾学校の教師Tom(Hansa Czypionka)と出会う。彼を通じて今までになかった安らぎを得始めた頃、突然母の訃報が舞い込む…

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確かに、MartinとLalaの間には聴感という大きな障壁があった。絶対的にコミュニケーションが出来ない設定ではあるが、これほど極端な例でなくても、実は世代間の葛藤など親子や家族間の対立は普遍的な出来事である。これにどう向き合うか、ということに対してはやはりLalaの母親、Kaiの存在が大きかった。「あの子が離れてゆく」というMartinに対し、「あなたのご両親と同じ過ちを繰り返さないで、ありのままを受け入れて」と諭す。そんな彼女が夭逝してから、ようやくMartinはLalaの志す音楽と向き合うのだ。

障害をキレイキレイに描いていない所に好感を持った。どうしてもこの手の作品では、障害を持った家族の為に、残りの家族が献身的になるところばかりを描きがちだが、音楽学校へ通うことを決意したLalaに対してMartinが、「お前が聾だったら、一緒にいれるのに」なんていう随分な台詞を吐露したりするのも新鮮だった。Lalaの妹、Marieが「きっと母親は聴こえないふりをしているに違いない」とイタズラをするのも妙にリアルな感じがした。

全篇を通じて思ったのだけど、手話って何だか「ダンス」みたい。聾唖の人は「声」がコミュニケーションの手段ではない分、表情や全身を使ったコミュニケーションが当然我々以上に発達している。印象に残っているシーンはLalaがTomと映画を見た後に、公園で屋台のソーセージを買っている時(この辺、いかにもドイツ!)に、流れてくる「I will survive」のメロディーに合わせて、歌詞を手話で再現するところ。そしてララが母親からコンサートチケットをもらうシーンでの、「大人になったら歌が唄えるようになると思って、鏡の前で練習をしていた」という台詞。Lalaの両親役の役者は実際に聾唖者らしいが、この場面でのEmmanuelle Laboritの表情がとても美しく、印象的だった。

先頭 表紙

2003-01-20 第87回 ラヴ・ソング (甜蜜蜜)

昼時にやっているような、べたべたなメロドラマ(特に音楽の盛り上げ方とか、可笑しくなるほど)みたいだけど、かなり切ない良い映画でした。

二人の大陸出身者が、お互いの夢のために香港で暮らす。近づきながらもすれ違い、そして離れながらも深まってゆく関係。そして運命に導かれるように再び異国の地で出会うまでの10年間がテレサ・テンの歌声とともに繰り広げられる。

天津からおばを頼って、まだ返還される前の香港(1986年)にはるばる渡ってきたシウクワン(レオン・ライ)。香港でお金を稼いで、天津に残した恋人を呼び寄せて結婚するのが彼の夢。ところが、英語はおろか広東語すらまともに話せない彼。初めての給料が出た日、憧れのマクドナルドに行くが、注文ひとつ満足に出来ない彼は、北京語で応対してくれた店員、レイキウ(マギー・チャン)に好感を抱く。

レイキウから、香港で働くには英語が必要といわれ、シウクワンは彼女が働く英会話学校に通うようになる。ただ西部劇のビデオを見せながら、「Son of a bitch!」とか「Go to hell!」とかスラングばっかり教える妙な講師(ウォン・カーウァイ映画でカメラを勤める、クリストファー・ドイルが怪演!)がいる学校ではあったが…

一方、広東語を話すレイキウも実は広州出身。香港でお金を稼ぎ、中国の母親の為に家を建てることが夢。仕事をいくつも掛け持ちし、銀行口座の残高が増えていくのだけが楽しみな孤独な女性。しかし、自身は大陸出身であることを隠し、都会の自立した女性を演じている。

そんな彼女はその年の大晦日、テレサ・テンのレコードやカセットを売るための屋台をシウクワンとともに出店する。香港には多くの大陸出身者がいる。彼らに絶大な人気を誇るテレサで一攫千金を狙うが、大陸出身者は自らの出自を隠すため、この店は大失敗。この夜、彼女は自分も大陸出身であることをシウクワンに告げる。そして孤独な二つの魂はこの夜、結ばれる。ためらいつつ、不器用に、でもお互いを激しく求め合うシーンは秀逸。

しかしそれからは、お互い「香港に来た目的」と現実のギャップに苦しむ。男は実際に恋人と結婚して初めて、自分の気持ちが妻には向いていないことに気付く。投資に失敗した女はマッサージ嬢になり、そこで知り合ったやくざの親分の情婦になる。

一旦離れたかに見えた二人。しかし、そんな二人を再び引き合わせたのはテレサ・テンの歌。お互いの生活を捨てて、二人で暮らして行こうと決めた矢先、皮肉な運命は二人を引き裂いてゆく。

それから月日は流れ、三度彼らは異国の地で偶然出会う。二人を引き合わせたのはテレサの訃報だった…

原題は「甜蜜蜜」。何だか甘ったるそうな字面だけど、これは劇中でも流れているテレサ・テンの同名の歌から取った、とのこと。その他、テレサが歌う「長崎は今日も雨だった」や「グッドバイ・マイ・ラブ」も聴くことが出来ます。

テレサ自身も台湾生まれだけど親は大陸系の人。台湾から香港に進出し、東南アジア諸国や日本での活躍はご存知の通り。中国共産党政府から「精神汚染」と弾劾されていたが、その後、共産党の態度が急激に軟化。中国本土でのコンサートを目前に控えていた時期に、天安門事件が起き、コンサートは中止。そしてタイで客死…

この辺りの事情は疎いのだけれど(有田芳生さんの著作でも読んでみるか)、「さまよえる中国人」の象徴として、彼女をモチーフにしていたのが、とても印象に残った。

最後にひとつだけ難点を挙げるならば、それはNYの描き方。チャイナタウン(ダウンタウン)で働いているシウクワンが、野菜を自転車に乗せてタイムス・スクエアを走っているのか? いくらなんでもそれはありえないでしょう?

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2002-10-14 第86回 親愛なる日記 (Caro Diario)

初めてイタリアを旅した時、Milan はドゥオーモの近くにある、リナシャンテというデパートで僕はお土産を探していた。8年くらい前のことだ。そこで映画のフィルムを入れる缶に入ったTシャツ、というのが売っていた。シャツに書かれているイラストはもちろん映画にちなんだ題材だ。

いくつかあったシャツの中から僕が気に入って購入したのは、ヴェスパに乗った男の後ろ姿のイラストが描かれていたものだ。その映画のタイトルに覚えはなかったけど、ほのぼのとしたタッチのその絵が気に入ってしまったのだ。それが「Caro Diario」 - 邦題「親愛なる日記」。つい最近、たまたまスカパーでオンエアされていたので見ることができた。

しかし...

見ていてつらいほどつまらない。2部で「クスリ」と笑った以外は、見ててこれっぽっちも面白いと思わなかった。Tシャツはよかったのだが...

===

映画監督であり、俳優でもある Nanni Moretti の日常を3つのストーリーで構成するオムニバス映画。

[ヴェスパにのって]

誰もがバカンスに出かけ街はもぬけの殻、映画館さえもつまらない作品ばかり上映する8月のローマを Nanni がヴェスパで駆け抜ける。住宅地の建物を見て回るのが好きらしい。通りすがりに偶然憧れの Jennifer Beals と出会うが会話がかみ合わない。突然、尊敬する映画監督、Pasolini の遺体発見現場である海岸へと向かう Nanni。ただ、バックに流れる Keith Jarrett の「ケルンコンサート」が、何ともベタな選曲...

[島めぐり]

脚本執筆の為、リバリ島に住む友人・Gerardo(Renato Carpentieri)を訪ねるが、そこはうるさすぎて仕事に集中できない。彼と一緒に様々な島を巡るが、どれも今一つ。おまけに友人は30年間テレビ無しの生活をしていたはずなのに、船内で見たテレビドラマにはまってしまい、道中ずっとドラマの続きが気になり出し、ようやく静かな島に辿り着いたと思ったら、そこには電気が通っていないため、テレビを求めて Gerardo は島を飛び出してしまう。

[医者めぐり]

ある日突然、激しいかゆみに襲われた Nanni は医者に診察してもらい薬を貰うがさっぱりよくならない。違う医者にかかれば、それぞれが違う診断結果を出す。さんざん医者に振り回された挙げ句、精密検査の結果は「癌」だったという。これは彼の実体験を元にしたお話らしい。

先頭 表紙

お返事遅れてすみません。一応ビデオでの鑑賞を再開させました。劇場での一本目は「ラスト・プレゼント」に間に合わなければ「猟奇的な彼女」を予定。いづれにしても韓国映画になりそうです。 / マイケル ( 2003-01-20 04:46 )
あけましておめでとうございます。今年もよろしくです。今年最初の映画鑑賞は「ボーン・アイデンティティー」になりそうです。とりあえず今、海賊版の「火山高」みてます。キム・スロはいい!!!!! / valkil ( 2003-01-03 14:24 )
医学的なことは詳しくないので、すみません。でもそういう症状が出るきわめて珍しい癌の一種である、とどっかのWebで見ました。 / マイケル ( 2002-10-15 14:44 )
癌って痒いの? / 八百八六助 ( 2002-10-14 23:53 )

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